大きな裸婦

 19世紀後半に一世を風靡した印象派の中でも最も有名な画家のひとりピエール=オーギュスト・ルノワール晩年期を代表する裸婦作品のひとつ『大きな裸婦』。

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 ルノワールの持病であったリュウマチ性関節炎や顔面神経痛が悪化し、体調が著しく衰えていた頃に制作された本作は、画家がそれまでに幾多も手がけてきた≪横たわる裸婦≫を画題とした作品で、1903年頃からルノワールはクッションを背にした横たわる裸婦の連作をしており、本作はその中の最も完成度の高い作品として広く知られている。当時、両手が麻痺しつつあった老体であるにも関わらず、本作の画面から放たれる輝きを帯びた色彩と豊潤な官能性の表現は圧巻の一言である。

 

 横長の画面の中央へ配された僅かな白布を股に挟みながら横たわる裸婦は、緊張の色をまるで感じさせない非常に自然体な姿態で描かれており、観る者に柔らかな安心感を与えている。