本作の他に同様の構図で画題を描いた作品が2点確認されている

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    また歌手が纏う白地で縁に黒の毛のついた舞台衣装の軽やかで動きを感じさせる表現と、(日本の版画などに影響されたと考えられる)単純でありながら豊かで装飾的な色彩と、さらに歌手の半身にかかる(舞台袖の)深い黒色による背後の重厚な表現との、≪歌手≫との対照性を示しながら、画面全体では独特で洗練された統一感を感じさせる色彩と写真的な構図の構成感覚は見事の一言である。ある意味では実験的とも捉えられる、このような斬新で近代的な表現手法は、印象派の中でも他の画家らとは一線を画すエドガー・ドガであるからこそ成し得た表現とも言える。なお本作の他に同様の構図で画題を描いた作品が2点確認されている。


    歌手に当てられる人工的な光の効果的な描写。本作に描かれるのは、印象派の画家らを始め、写真家、文筆家、思想家など才能に溢れた様々な若い文化人が日々集い、互いに議論と交遊を重ねた、当時、最先端の流行発信場であったパリのカフェやレストランで歌う≪歌手≫と歌手の立つ舞台である。