北京暮らしはアドベンチャー WSJ記者体験記

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 海外からやって来た人は誰もが中国に対して愛情と憎しみという複雑な感情を持つ。中国を嫌いになる人もいれば、嫌なところがあってもそれほど気にならないという人もいる。結局、多くの人は好きでもあるし嫌いでもあるというその中間点に落ち着く。私たちもそうだ。

 中国を嫌いになる理由は確かに数多くある。中国のインターネットはダイヤルアップ接続なのでいら立ちを覚える。メールを1件送信するのに5分かかったこともある。フェイスブックツイッターはもちろん遮断されている。見たい時には仮想プライベートネットワーク(VPN)から見ることもでき、「防火長城(グレート・ファイアウオール)」と呼ばれるインターネットの接続規制をすり抜けることもできるが、確実とは言えず、あまり頼りにならない。雑誌のダウンロードやたった数分の動画のストリーミングに数時間かかったこともある。

 大気汚染もひどい。時には頭痛がして目がかゆくなり、のどがかれて痛くなるほどだ。そんな時は誰もが家にこもり、空気清浄機の横でじっとしている。それでも、自分の中にがんの遺伝子が育っているのではと不安になることさえある。

 政府がすべてをコントロールしていることも不便だ。北京市は、暖房の使用は11月15日から翌年3月15日までで、それ以前も以後も必要ないと決定した。ただ北京の冬は寒く、長い。室内の温度が10度を下回ることもある。そんな時、私たちは都会のキャンプ場のように、ストーブの周りに肩を寄せ合って身体を温めたものだった。

 食材にも問題がある。北京で夕食の献立を考えると、米国で親しんでいたレシピの半分は作れないことに気づく。鶏肉、豚肉、牛肉、魚はどれも衛生上、問題がある可能性がある。野菜は重金属で汚染された土壌で育てられ、大量の殺虫剤をかけられているかもしれない。中国の牛乳には添加物が含まれているとの報道もあった。コメさえカドミウム汚染の恐れがある。